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2015年4月15日水曜日

「他社特許の壁を突破する!(第02弾) 容器詰液体調調味料(特許第4772580号)を題材に」~実践的知財勉強会@MIP第03回開催報告

■討議テーマ
他社特許の壁を突破する!(第02弾) 容器詰液体調調味料(特許第4772580号)

■討議内容

今回は、

前回と、同じく、

他社特許の壁を突破する!

をテーマに討議を進めました。

題材は、前回と同様


です。

まずは、この特許の課題を整理しました。

特許発明の課題は、【発明が解決しようとする課題】にかかれています

ここで、注意すべきは、特許公報にかかれている内容すべてが「真実」というわけではない

ということです。

特許は、あくまでも「法律で決められた条件(要件)」をクリアすれば付与されるものです

「進歩性」や「実施可能要件」などをクリアできるのであれば、

その発明が本当に解決しようとしている課題(問題点)を書く必要はありません。

この特許の課題は、【0004】にかかれています。

【発明が解決しようとする課題】
【0004】  前述の従来技術においては、カリウム由来の異味抑制に十分な効果が得られない、風味 バランスが損なわれてしまうなどの課題があり、継続摂取が可能な風味とは言えないのが 現状である。従って、ナトリウム量が少ないにもかかわらず塩味が増強され、カリウム由 来の異味が抑制されて風味バランス良好で、継続摂取可能な容器詰液体調味料を得ること が望まれている。本発明の目的は、ナトリウム量が少ないにもかかわらず塩味が増強され、カリウム由来 の異味が抑制されて風味バランス良好で、継続摂取可能な容器詰液体調味料を提供することにある。

つまり、この発明は、

Na量を減らした分の塩味を、カリウムでカバーする⇒カリウム由来の異味が生じてしまう

という点に注目した発明と言えます。

この内容はあくまでも、「この特許」が想定した課題ですから、
「真の課題は別にあるのでは?」と疑いつつも、読み進めます。

なお、メンバーからでた意見の一部を紹介します。
・ナトリウムの過剰摂取を抑えたいという要望があるなかで、風味バランス良好で摂取できる液体調味料を提供する。
発酵調味料としてアルコールが入っていても売れる(10%くらい)+酒税もかからない。
風味バランスの良好+継続摂取可能(進歩性が出せるのか?)が課題。花王は自社引用の先行技術が多い。→先行技術から足りなかったものを読み取り、課題を見つけるとよい。
バランス調整して克服していく(ナトリウムを少なく、カリウムを増やすといった)
また、この時点ででた話題としては、
なぜ、「容器詰液体調味料」として権利化しているのか?
→商品イメージとして権利を取りたいのか。
→濃縮して容器詰してしまえば回避できるという手段があったのではないか。権利行使しやすい。固形物がある調味料を想定していたのでは。
→容器詰ではないと、他の先行技術も含まれてしまい、進歩性や新規制の部分で特許取得が難しかったのではないか。
というものがありました。

次に、独立項である【請求項1】を、各構成要素に分解しました。

請求項1
 次の成分(A)、(B)、(C)及び(D)、
(A)ナトリウム                  3.6~5.5質量
(B)カリウム                   0.5~6質量%
(C)酸性アミノ酸が2質量%超であってアスパラギン酸1質量%超~3質量%以下及
びグルタミン酸1質量%超~2質量%以下
(D)エタノール                  1~10質量%
を含有する容器詰液体調味料。

※下線は、審査段階で「補正」された部分

細かい討議は割愛しますが、

構成要素のうち、ABは技術常識。Cが本発明のポイントでは?
その根拠として、ABCが一緒でDだけが違う特許404014320041118日)があった。
→アルコールあり、なしで特許をとったのか。群でとった可能性がある。なので、やはりアミノ酸が大事なのでは。

という、暫定的な結論が出ました。

また、本発明は、審査の過程で、補正がされています。

そこで、経過情報を見て、権利範囲から除外された部分が判明すれば、
侵害回避/突破のアイディアあるのでは?という視点で、討議しました。

権利範囲を限定している部分を見抜き、スキを突く作戦です

詳細は割愛ますが、

元の出願では、「アミノ酸」のうち、酸性と塩基性どちらも権利範囲ではあった。
※ 塩基性とは、いわゆるアルカリ性のことです。

しかし、審査の過程で、塩基性は補正により削除し、

アスパラギン酸(酸性アミノ酸)
グルタミン酸(酸性アミノ酸)

のみを権利範囲にしていました。

そこで、一つのアイディアとして、

酸性を用いず、塩基性アミノ酸の中から、風味バランスを良好にする調味料を開発することができれば、この特許を回避/突破できるのでは?

という意見が出ました(あくまでも、アイディアの1つです)。

それ以外にも、

酸性アミノ酸を先行文献の公知技術である糖類に置き換えられるのではないか。
・アスパラギン酸及びグルタミン酸の部分を[0011]に列挙されている物質の組合せで作れないのか。
・粘度をあげる。下に沈殿させて濃度をあげる。
>調べたところ、このアイディアは実際に他社が出願していました
・黒い色素を入れる。プラシーボ(視覚)効果を入れる。
・元素周期表にしたがって、Ⅰ族の元素(族が同じだと特性が近似するため)を試してみるのはどうか?
>具体的には、リチウムなどですが、こちらも調べたところ、近い視点の研究論文が存在しておりました。
などのアイディアが出ていました。



図 元素周期表 



■次回のテーマ
このブログを書いている時点では、すでに第4回は終了しています。

第5回は、

クリアランス調査(第01弾) 容器詰液体調調味料(特開2007-289083)

を行う予定です

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